腐れ縁なんてクソ食らえ！！
　人にぶつからないように注意しつつも、ロープをじぃっと見ていたら、俺はだんだんとんでもない勘違いをしていたことに気がついた。

　あと数歩で桜に触れるという距離までいくと、俺の目にはロープとは似ても似つかないものが視界に映る。


　それはどう見ても、黒いロープなどではなく、触り心地のよさそうな黒い毛の尻尾だった。


（ただの見間違いかよ。ダセー俺。つか、何？俺はこんなくだらないことのために、知りもしない奴らにおかしな奴だと思われたわけか？）



　奴らの不快な顔を思い出し、ッチと舌打ちをする。

　するとその音に反応するように、その尻尾の持ち主が桜の木から音もなく華麗に降りてきた。
　ミャアと鳴かれて、俺は深い溜め息をつく。


　何のことはない。蓋を開けてみれば、不可解なロープは黒猫が桜の木の枝に尻尾を垂らして座っていたのを見間違ったというだけの話だ。

　つまらない事実にムカつくが現実なんてそんなもの。面倒事じゃなかっただけマシかと、猫の目線に合わせてしゃがみながら考える。


　黒猫は思ったよりも人懐っこいらしく、俺が顔を近づけても逃げようとはしなかった。
　試しに顎のあたりを撫でてみたら、気持ちよさそうにゴロゴロと鳴いた。

　このまま猫と遊んでいたいが、そういうわけにもいかない。俺は最後に乱暴な手つきで猫の頭を撫でると勢いよく立って、学校に向かうことにした。
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表紙・目次

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