腐れ縁なんてクソ食らえ!!
 謎のロープは故意によるものではなく、猫の尻尾であっただけ。

 それで終わればよかった。いや終わるはずだった。

 しかし・・・・・・




「仏頂面で猫に近づくから、てっきり動物虐待でもするかと思ったんだけどな」


 そんな声とともに、さっきまで黒猫がいた桜の木がガサガサと音を立てた。

 次いでストンと着地のする音がして振り返ると、さっきまで猫がいた場所に俺と同じ制服を着た男が立ち上がるところだった。


 いきなり現れたその男に、俺は不審な目を向ける。

 声が上から聞こえたことや、あきらかに今桜の木から降りてきたような感じからして、こいつもさっきの黒猫と同じように桜の木に登っていたことはわかるが、なぜこいつがそんな行動をとったのかはまったくわからない。

 俺と同じように猫の尻尾が気になったとも考えられるが、だからといってわざわざ桜の木に登る必要はないだろう。


「あんた、何してたんだ」

 警戒して普段よりも低い声で問いかけると、そいつはわざとらしく驚いた顔をした。

「意外だな。そんな形(なり)で結構低い声も出せるんだ」

「初対面の奴に随分失礼なこと言うんだな」
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