腐れ縁なんてクソ食らえ!!
 冷静に言っているようで、内心腸が煮え繰り返るような思いだった。

 俺よりも低く耳に心地よい低音と柔和ながらも男らしい切れ長の目を持ち、さらには俺が首が痛くなりそうなほど見上げなければならない背丈のその男は、一瞬で俺の標的になる。


「そんな警戒しなさんな。その新品の制服を着てるってことは、君も俺と同じ新入生なわけだろ。最も君の場合、その制服を着てないと高校生かどうかも判別しずらいけど」

「喧嘩売ってんなら買うぞ」

 そいつのさらなる暴言に殺意を持った俺は、手を握り締めてその怒りを溜めていく。


 こいつの言うとおり、俺を一発で高校生と判断する奴はそういない。というか皆無といってもいい。
 数年前までは性別まで間違われたくらいだ。


 ほとんど女子と変わらない背丈。中学は運動部に入っていたし、人一倍喧嘩もしてきたから筋肉はそれなりについているはずだが、着やせする性質なのか服を着るとそうとは見えない。
 目も標準より大きく、精悍とははるかに遠い、幼い印象を受ける童顔な顔。


 このすべては俺の長年のコンプレックスの一つだ。

 男らしくないと言われるのも、一度や二度ではない。それこそしょっちゅうだ。だが、ここまであからさまに言われるのは久しぶりのことだった。



 俺を見下ろす男は大概気に食わないが、それ以上に自分の容姿について言われるのが大嫌いな俺は、そいつを警戒する相手から敵と認識した。
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