究極のメソード
Kは古ぼけたその本を
じっと見つめる。


手垢のついたその本は
Kに何かを語りかけてくるようだった。


Kは一言つぶやく。


「それで再演ってわけか」


こぶしを握り締めるK。


「でも現実は劇のようには
行かないんだよ」


本を手にしたKが
病院を後にする。


緑の中に包まれた病院が
だんだん小さくなっていく。


Kのこぶしは
先ほどと同じく


ずっと握られたままだった。








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