あなたが私にできる事
元通り
教室の前を通りかかったら阿部さんがドアの前にいた。
中の様子をうかがっているらしい。
彼女に近づくとパサパサの茶色い髪を引っ張った。
「何してるの?」
「痛っ。げっ。」
私の顔を見て嫌そうな顔をする。
「何してるの?」
私は表情を変えずに同じ言葉を吐いた。
「いちいち人の髪引っ張るのやめて。
あんたがヤマとどっか行ったって聞いたから…。」
「知りたい?」
私はわざとらしく笑顔を作る。
そんな私を見た阿部さんの顔が強張った。
「昨日のセリフ忘れたの?」
「忘れてないよ。だからきっぱり言ったから。“私に関わるな”って。安心していいよ。私たちには何もない。」
阿部さんはほっとした様子を見せた。
「ところでさ、誰に聞いたの?私と山口くんがどっか行ったって。」