あなたが私にできる事
だけど私は…。
「告白なんてしないよ。付き合いたいなんて思ってない。
ただ…、前みたいに山口くんのそばにいたい。」
ーー彼氏はもう作らないーー
その決心を思い出した。
私の想いを伝えることによって山口くんとの仲が崩れるなんて嫌だ。
和希の二の舞になんてさせない。
「だからね…。」
「だからあんたの好きにしな。私はもうあんたに手出ししない。」
阿部さんはそう言いながら私に小指を差し出した。
おずおずとその小指に自分の小指を絡める。
「はい。約束。」
小指を解くと“あ~ぁ。寝る気失せた。”と伸びをしながら部屋を出て行く。
私はその後ろ姿に小さく呟いた。
「ありがとう。」
聞こえていたのか、いないのか、彼女は後ろを向いたまま右手を軽く上げドアを閉めた。