あなたが私にできる事
この学校は保健室の隣の空き教室をベットルームとして使っていた。
保健室と教室を隔てる壁にこじつけた様なドアがある。
阿部さんが出て行ってしばらくしてから私はそのドアを開けた。
「あら。具合はもういいの?」
メガネの似合う保健医が私に微笑みかける。
目尻に深く刻まれたシワが彼女の人柄を物語っていた。
「こっちの部屋にいてもいいですか?」
「えぇ。
そうだ!これ書いてもらえる?」
先生はソファに腰掛ける私にバインダーを差し出した。
保健室を訪れた生徒のクラスや名前、症状などを書き込む用紙が挟まれている。
前の行には“阿部真理子”と書かれていた。
なんかムカつくけど憎めない人だ。
きっと本人にそんなこと言ったら怒りだすだろう。
「悪いけどちょっと職員室行ってくるわね。誰か来たら適当によろしく。」
そんないい加減なことを言って先生は保健室を出て行った。
私は一人で残される。
ゆっくりこの心を落ち着かそう。
ソファに深く身を沈め目を閉じた。
2、3分経った頃、ドアの開く音がした。
先生が帰って来たのだろう。と思い閉じていた目を少しずつ開く。