あなたが私にできる事

成り行き



私はどうしてこの人と食事をしているのだろう。
山口くんはおいしそうに目玉焼きの乗ったハンバーグを頬張っている。



今まであいさつ程度しか交わしたことのないクラスメート。
彼のことは何一つ知らない。



「私とごはん食べて楽しい?」



山口くんは何を言われているのか理解できていない様子で私を見る。
止まった手に握られたフォークにはハンバーグが刺さったままでデミグラスソースがぽたぽた落ちていた。



「え?うん。一人で食べるよりは…。」




その正直な感想に笑いが漏れる。




「あはは…、そうだよね?“一人で食べるよりは”楽しいよね?」



「あっ…!そういう意味じゃなくて!楽しいよ!神崎さんといるの!!」




慌てた様子の山口くんの姿がおもしろくて私はまた笑った。




さっきまではどん底だった気分が晴れていく。
ハンバーグの香りがする中で食べるイチゴパフェもおいしかった。



スプーンでコーンフレークをガサッとつついた時に思い出す。


ファミレスの喧騒。
和希のあの声。
和希の最後の表情。



ダメだ。
楽しんでなんかいちゃダメだ。
人を傷つけたというのに。
自分勝手な私のせいで和希に嫌な思いをさせたくせに。



私には楽しむ資格なんかない。



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