あなたが私にできる事
それは永遠にも感じられる時間だった。
山口くんは私を離すと嬉しそうに笑う。
「あー、よかったー。」
そう。
彼にとってはこんなの軽いハグみたいなものなんだ。
意識なんてするな。
堰を切って溢れ出しそうな感情を凍らせる。
「一生口聞いてもらえないかと思ったよ。」
「ごめん。」
私は小さな声で再び謝った。
「ううん。俺の方こそごめん。真理子が原因だったんだろ?俺、こんなことになるとは思ってなかったから。」
彼の口から阿部さんの名前が出た。
それだけで心が掻き乱される。
そんなに親しげに誰かの名を口にして欲しくない。
「俺、ちゃんと真理子と話するよ。そうすればもう神崎さんに迷惑かけることにはならないと思うから。」
「いいよ。大丈夫。私ね、阿部さんと話したの。だからもう大丈夫。安心して?」