あなたが私にできる事
思わず山口くんの方に向き直った。
そしてその顔を見つめる。
その瞳は何か勝ち誇ったような自信に満ち溢れていた。
口元には笑み。
「なんでふったってわかったの?」
今の私はすごい顔をしているだろう。
きっと数時間前、和希に別れ話をしている時と同じ顔に違いない。
「簡単だよ。ふられたヤツは“ふられた”か“失恋した”って正直な表現。ふったヤツは“別れた”とか“終わった”ってキレイな表現。罪悪感からかね〜?ま、大体このパターンだよ。」
山口くんはしたり顔で私を見る。
「ちょっとすごいかも…。」
「だから言ったじゃん。得意だって。」
その態度にムッとする。
「それで?ふった立場の神崎さんがどうしてそんなに落ちてるの?どうして泣く必要があるの?」
海で泣いていたことはバレていたらしい。
それでも何も言ってこなかった山口くんに少しだけ感謝する。
だから
「好きだったからだよ。別れることが淋しかったから。」
素直に応えてあげることにした。