あなたが私にできる事
「あー。思い出してよかった。このまま無かったことにされるトコだったよ。」
山口くんはおいしそうにオレンジジュースを飲んでいる。
彼はあの線香花火をした時、私が負けたことを忘れていなかった。
「忘れてくれてよかったのに。」
「俺は、忘れないよ。」
急に遠い目をしたかと思ったら真顔でそんなことを言う。
「こういうことだけはね!」
次の瞬間にはいつもの笑顔に戻っていた。
「ところでさ、元カレのことはもうふっ切れたみたいだな。さっき表情変わらなかったし。」
和希のことは引きずっていたわけじゃない。
私はそんな風に見えていたのだろうか。
「前はその話になると顔が強張ってたから。」
「そう…なの?」
「うん。ガッチガチで般若みたいだったよ。こんな感じ。」
彼がその真似をする。
「ちょっと。やめてよ。私そんな顔してないよ!」
山口くんはわざと変な顔をして私を笑わせた。