あなたが私にできる事



「あー。思い出してよかった。このまま無かったことにされるトコだったよ。」



山口くんはおいしそうにオレンジジュースを飲んでいる。



彼はあの線香花火をした時、私が負けたことを忘れていなかった。




「忘れてくれてよかったのに。」



「俺は、忘れないよ。」



急に遠い目をしたかと思ったら真顔でそんなことを言う。



「こういうことだけはね!」



次の瞬間にはいつもの笑顔に戻っていた。



「ところでさ、元カレのことはもうふっ切れたみたいだな。さっき表情変わらなかったし。」



和希のことは引きずっていたわけじゃない。


私はそんな風に見えていたのだろうか。



「前はその話になると顔が強張ってたから。」



「そう…なの?」



「うん。ガッチガチで般若みたいだったよ。こんな感じ。」



彼がその真似をする。



「ちょっと。やめてよ。私そんな顔してないよ!」



山口くんはわざと変な顔をして私を笑わせた。





< 142 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop