あなたが私にできる事



「あのさ、もしかして…、わざとここに連れて来てくれた?」



「あっ。バレた?やっぱりさっきのわざとらしかったかなぁ。横山に怒られそ。」



苦笑いする彼に感謝した。


和希のことは気にならないけど、他人にいろいろと聞かれるのは気分が悪い。



ただでさえ人と話すことは苦手なのだ。




「ありがとう。」



「こっちこそ。ごちそーさん。」



山口くんは空になった缶を少し離れた場所にあるゴミ箱に投げた。



「さ、授業始まるよ?」



缶の行く先も確認せずに歩き出す。



見事ゴミ箱に吸い込まれた缶がコンッという軽い音を立てた。



「ところで横山くんはいったい何キャラなの?」



「んー。告白大王でさ。すぐ告ってはフラれ、告ってはフラれ。」



「なんか美紀みたいだね。」



「本人に言ったら怒られるよ。
横山のことで困ったら俺に言って。なんとかするから。」



私は、そんな言葉一つだけで気持ちが温かくなる。



誰もいらないと思っていたこの世界を少しずつ大切に感じ始めていた。






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