あなたが私にできる事




母の視線を意識しながら通話ボタンを押す。



「もしもし…。」



『神崎さん!?今大丈夫?』



「うん…。」



『よかった~。だったら今すぐ俺ん家来て!』




私の大丈夫は“電話しても”大丈夫という意味だったのだが、山口くんに違うように捉えられた。




「今すぐ?」




チラリと母を見ると彼女は慌てて視線をそらす。




『カメ吉が大変なんだ!』




「わかった。」




ゆっくりと携帯を閉じてバックにしまう。



「出かけてくる。」



母の顔は見なかった。



返事も聞かなかった。




私は一目散に逃げ道を求めて走りだした。






< 158 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop