あなたが私にできる事
何度目かの沈黙の間に店員が皿を下げに来た。
お互い見るものがなくなった。
「その元彼との思い出ってある?」
心を見透かされたと思った。今の私の中は和希との思い出でいっぱいだ。
「うん。たくさんある。」
胸に広がるあのやすらぎの日々。
「楽しい思い出?つらい思い出?」
「楽しい思い出。全部、楽しい思い出ばっかり。」
言葉と一緒に思い出も噛み締める。
「ならいいんじゃね?相手もふられ損じゃないだろうし。」
山口くんがはっきりと私を見つめた。
そして言葉を続ける。
「ただ、神崎さんがかわらない限り同じこと繰り返すと思うよ。」
目の前が止まった。
そう思うくらい衝撃を受けた。
私がかわらなければならない。
山口くんのその言葉は私の心を、過去の思い出を揺さ振った。
「そろそろ出よっか。」
私はまるで何事もなかったかのように席を立った。