あなたが私にできる事
どうして山口くんがそれを知っているのだろう。
美紀も知らないのに。
誰にも教えてないのに。
「うん。でもね、私にはそんなものいらないの。
あの日以来、“誕生日おめでとう”なんて言ってもらったことないから。…もちろん母にもね。」
彼は突然立ち上がると家の中に消えてしまった。
奥の方でガタガタと音がしたかと思うとすぐに戻ってくる。
その彼の手には…。
「なんで…!?」
「お祝…してあげたくて。だけどまさか今日がそんな日だったなんて知らなかった。」
縁側に大きなチョコレートケーキが置かれる。
真ん中に乗せられた板チョコには“HappyBirthday ERIKA”と書かれていた。
「でも誕生日って大切だと思うんだ。
俺は神崎さんがこの世に誕生してくれてよかったって思う。
神崎さんと出会えてよかったって思う。
だから、これからは俺が言うよ。
神崎さん、お誕生日おめでとう。」