あなたが私にできる事
手の甲で涙を拭う。
「食べよ!ケーキ。」
「今切ってくる。」
少し困った顔をしたままの山口くんが立ち上がる。
「待って!」
「ん?」
「フォークだけ。フォークだけ取ってきて。」
山口くんからフォークを受け取ると私は躊躇なくそれをケーキに突き刺した。
「神崎さん!?」
ケーキを大きくすくって口に詰め込む。
「あぁ~。幸せ~。
一回してみたかったの。ホール食い。」
柔らかいスポンジ。少しビターなチョコレートクリーム。
目の前には好きな人。
「本っ当。子供だなぁ。神崎さん。」
口の中いっぱいにケーキを頬張る私に山口くんが苦笑する。