あなたが私にできる事



手の甲で涙を拭う。



「食べよ!ケーキ。」



「今切ってくる。」




少し困った顔をしたままの山口くんが立ち上がる。



「待って!」



「ん?」



「フォークだけ。フォークだけ取ってきて。」




山口くんからフォークを受け取ると私は躊躇なくそれをケーキに突き刺した。



「神崎さん!?」




ケーキを大きくすくって口に詰め込む。




「あぁ~。幸せ~。
一回してみたかったの。ホール食い。」




柔らかいスポンジ。少しビターなチョコレートクリーム。



目の前には好きな人。





「本っ当。子供だなぁ。神崎さん。」




口の中いっぱいにケーキを頬張る私に山口くんが苦笑する。






< 179 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop