あなたが私にできる事
彼は山口くんの顔をじっと見ていた。
「会ったことあるよな?俺たち。」
山口くんが意外そうな顔をする。
「まさか。俺こんな頭いい高校に知り合いなんていないよ?」
「いや…。だけど…。」
まだ何か言おうとする彼を山口くんが遮った。
「神崎さん。電車来ちゃうよ!早く行かないと!」
「あっ…。うん。ありがとう。またね。」
私は二人に手を振って改札を通った。
電車はガラガラだった。
だけど私はいつも通り立ったまま外を見る。
線路と平行して走る幹線道路。
そこから家に帰る山口くんを見るのが好きだった。
それなのに今日はその姿が見えなかった。
代わりに私の目に入ったのは
ビニール傘をさして駅に向かう
和希だった。