あなたが私にできる事
校舎の中はしんと静まりかえっていて、すでに授業が始まっている時間なのだと気がついた。
「何、あんた。今来たの?」
振り返ると阿部さんがこっちに歩いて来ていた。
「おはよう。」
そのまま彼女の後をついて行く。
「何?」
「つき合うよ。」
阿部さんは使われていない部室まで来ると、慣れた手つきで鍵を開けて中に入る。
薄暗い部屋の中は外よりも寒かった。
「鍵、閉めてね。」
「どこから手に入れたの?ソレ。」
彼女の手の中にある銀色の鍵を顎で差す。
「企業秘密。」
不敵に微笑むとブレザーの内ポケットから煙草を取り出した。