あなたが私にできる事
自分の表情が固まったことがはっきりとわかった。
阿部さんはそんな私を見て満足そうに笑った。
「残念だったね。」
「…本人がそう言ったの?」
声がかすれた。
「まさか。
1年以上も一緒にいたんだよ?そのくらい気づく。」
「わかってて…つき合ってたの?」
やけにのどが渇く。
「そう。バカでしょ?
だけどそれでも構わなかった。たとえ私のことを見てくれなくても、彼に特別扱いしてもらえるだけで幸せだったよ。
少なくともあの時は誰よりもヤマの近くにいれた。」
そう言った阿部さんはすごくキレイで、すごく幸せそうだった。
「未だにどうして私とつき合ってくれたのかわからないんだけどね。それと、突然フラれた理由もいまいちわかんないし。」
彼女は短くなった煙草を携帯灰皿に押しつける。
「っていうか、ヤマの好きな子って元中だと思うんだよね。」
私は一人でしゃべる阿部さんをただ眺めていた。