あなたが私にできる事
山口くんは帰り際にも声をかけてきた。
「あっ!神崎さん。バイバ~イ。」
「ばいばい…。」
やっぱり不愛想に返してしまう。
「なんか変。」
一緒にいた美紀が言う。
「何が?」
「ヤマと仲良くなってんじゃん。今まであいさつとかしてなかったよ?」
彼女は不審そうに眉根を寄せた。
「向こうが勝手に話しかけてくるだけ。私は関係ないよ。」
「贅沢者~。ヤマって女子とあんまり会話しないんだよ?優しいから話しかければ相手してくれるけどさ、自分からかまったりすることないんだよ?」
そう言いながら口を尖らせる。
長いまつげ。小動物を連想させる丸い瞳。きれいな肌。甘えた声。
見た目も中身もまさに“美少女”というタイプの美紀が私は羨ましかった。
「なんかさ、美紀見てるとアメあげたくなる。」
「もぅ!何ソレ?美紀の事バカにしてる?」
怒ったようにプゥっと頬を膨らませる。
そんなわざとらしい行動を許せるのはこの子だけだなと感じた。