あなたが私にできる事




山口くんはチョコと私を交互に見る。


「神崎さん…。」


切なげな表情で私を見つめた。
私は何も言えなくて彼が口を開くのを待つ。




「あのさ…、
バレンタインデーはおめでとうじゃない。
せめてビニール袋から出して渡そうよ。
それとこれそこのコンビニで見かけた気がするんだけど…。」





肩に掛けていたバックがずり落ちた。





久しぶりに会ったのに。


初めてのバレンタインデーのチョコなのに。


二人っきりなのに。






高まっていた気分が落ちていく。





「約束は守ったよ。私の人生初めてのバレンタインデーのチョコなんだよ?
私はそんなの全然興味ないし。
だけど山口くんが欲しいって言うから…、そしたら、すごく渡したくなったの。
なのに和希のこととかあってわけわからなくなっちゃうし。
会うの気まずくて…でも会いたくて…。そしたら靴が…。」



話しているうちに何を言いたいのかわからなくなってくる。




「神崎さん?何が言いたいの?」




そして、




「だから…私は山口くんが好きなの!!」









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