あなたが私にできる事



1年前…。



私と和希が別れた頃…。




「突然、和希に呼び出された。海の近くのファミレスに。
速攻言われたよ。“今恵梨香と別れた”って。」



「和希…驚いてたよね。
私、突然別れ話しちゃったから。」



山口くんは両手で私の手を握り締めた。



「あいつな、わかってたんだ。
フラれるって。」



「ど…うして…?」



「あの頃、神崎さんのことでずっと悩んでた。
何かあるって。何かに苦しんでるって。それなのに俺には話してくれない、俺には頼ってくれないって。」




和希の不器用な笑顔が蘇る。



「あいつ言ってたよ。
“俺の気持ちをしっかり伝えれば、俺がもっと器の大きい男なら、恵梨香も安心できるかな”って。」



目の前にいる山口くんの顔がぼやける。



「私…、和希に…」



山口くんの手の甲にポタポタと涙が落ちる。





私は和希になんてひどいことをしたのだろう。







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