あなたが私にできる事




彼は手を離すと私の全身を包みこんでくれた。



「大丈夫だから。あいつは強い男だから。
じゃなきゃ、あんなことは言えないよ。」



「あんなこと?」



山口くんは私から体を離すと、瞳をしっかりと見据える。



「“恵梨香のことよろしく。あいつは俺とよく似てるんだ。だからお前ならきっと救ってやれる。好きなんだろ?恵梨香のこと。”だとさ。一字一句覚えちゃったよ。まったく。
あいつには俺の気持ちもバレバレ。」



「やっぱすごいや。和希。」




笑いながらそう言う私を山口くんは不安そうに見る。



「あいつの方がいいとか思った?」



「私がなりふり構わず何かを手に入れたいって思ったのは山口くんが初めてだよ。
私を救ってくれたのは山口くんだよ。」



自ら彼の首の後ろに手をまわして抱きつく。



「私が好きなのは山口くんだよ。」



長い長いため息が聞こえた。




「よかったー。
俺…、がんばった甲斐があった。
この1年…、神崎さんの為に生きてきたようなもんだよ。」









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