あなたが私にできる事
ドアを開けようとした時、山口くんに手首を掴まれた。
そのまま私の手を自分の口元へと運ぶ。
「俺も、“和希”“和希”言ってるの聞くとすっげームカつくんだけど?
恵梨香?」
手の甲に山口くんの熱い吐息がかかる。
唇が触れるか触れないかの距離。
私は彼を睨みながらその手を振り払う。
「早く戻ろ?美紀が待ってるから。」
彼はクスクスと笑う。
「顔、真っ赤だよ?
っていうか俺のことは呼んでくれないの?」
あんなこと言うんじゃなかった。
山口くんはすごく意地悪な顔をして私を見る。
たかが名前を呼ぶだけなのにどうしてこんなにも躊躇ってしまうのだろう。
「行こう。ひ…久志!!」