あなたが私にできる事
恐る恐る声をかけた。
彼は驚いたようにこちらに振り向いた。
なぜ声を掛けられたのかわからないというように私を見つめる。
「この間、傘ありがとう。玄関の傘立てに入れておいたから。」
「あぁ…。別に貰ってくれてよかったのに。ただのビニール傘だし。」
私の事を思い出したようで、淡々と言った。
「だけど名前書いてあったから。笑っちゃった。」
「名前?傘に?」
「うん。」
彼は心当たりがないのか首を捻っていた。
そして机に広がる教科書やノートを閉じると筆箱と一緒に鞄にしまい立ち上がった。
帰るのかと思い私も後について行った。
彼は玄関まで来ると傘立てから自分の傘を抜く。
「ちっ。あいつ…。」
舌打ちも彼には似合わなかった。
「どうしたの?」