あなたが私にできる事
男と女のつき合いって不思議だ。
和希は誰よりも私に近いトコにいた。
それなのにあの瞬間、誰よりも遠い存在となる。
「わかった。」とだけ言った彼は何を思ったのだろう。
突然の別れ話にうろたえるわけでもなく怒るわけでもなかった。
ただ少し淋しそうに微笑んで私を見つめていた。
感情を消した私の声、少し憐れむような和希の声、ランチ時独特のファミレスの喧騒。
一人になってもそれは耳に残って離れない。
だから海に来た。
潮騒は私の中の何もかもを洗い流してくれる。
バックから携帯を取り出すと和希のメモリーを消去した。
呼吸が速くなる。鼻の奥がツンとしてくる。
大丈夫。ここなら誰もいない。誰にも聞こえない。
そう思った瞬間、嗚咽と共に大量の涙があふれた。