あなたが私にできる事
「おねーさん。俺と遊ばない?」
突然、頭上からそんな声が聞こえてきたのは私の涙がおさまり始めた時だった。
私の気分とは正反対の暢気な声。
「!?」
驚いて声のした方に首を向けた。
「あれ?神崎さん?」
「あっ…。山口…くん。」
不謹慎な声の主は同じクラスの山口久志だった。
「何やってんの?こんなところで?」
今度は山口くんが驚く番だった。
それもそのはずだ。
2月なんてあり得ないくらい寒い日に風の強い海に来るバカはいない。
おまけに太陽は今にも沈もうとしていた。
「そっちこそ。」
自分の声が鼻声なことに気づいた。
きっと目も赤いだろう。
化粧だって崩れてるに違いない。
「どうせヒマだろ?どっか行こう。」
彼は私の質問には答えずに笑った。
そして砂浜の上に座り込む私に向かって手を差し出した。
「うわっ。つめてー手。どんだけいたんだよ?」
「うわっ。服が砂だらけ。キレイにとれるかなぁ?」
同時にそう言うとお互いの顔を見て笑い合った。