あなたが私にできる事
通路をはさんだ向こうの席には松本くんと優くん。
「今日横山休みなんだわ。俺だけあぶれちゃって。一人じゃつまらないだろ?お互い。」
「後ろの女子たちがお呼びだけど?」
彼女たちの騒ぐ声はまだ聞こえている。
「だってうるさいんだもん。あんなとこ入ったら落ち着かねー。」
「同感。だけど山口くんも十分うるさいよ。」
彼は気にした様子もなく“ははっ”と笑った。
彼らが前の席に座ったせいで他の男子も集まってくる。
出発する頃には私の周りは男子だらけになっていた。
窓枠に肘を置き外を眺める。
絶え間なく聞こえる笑い声。
遠い席同士で交わされる会話。
早速開けられるお菓子の香り。
毎回のことながら集団の移動は苦痛でしかない。
「エリザベス?これやるよ。」
ウトウトとし始めた時だった。
松本くんが私に向かってポテトチップスの袋を差し出す。
「ありがとう。でもいいや。」
スナック菓子はあまり好きじゃない。