あなたが私にできる事
駐車場も入館口も一般客はまばらで私たちの貸し切りのようだった。
「もうすぐイルカショー始まるみたいだよ。」
横のグループから聞こえてくる会話。
「早く行かないといい席取られちゃうね。」
みんな同じことを考えているようで同じ方向に歩いて行く。
私はショーの会場には向かわず矢印の書かれた案内板を追った。
誰も入って行かない自動ドア。
その奥にはいろいろなサイズの水槽が見えた。
一歩足を踏み入れると空気が変わった気がした。
流れる音楽も静かになり、照明も暗くなる。
鮫の泳ぐ水槽も、食べたことのある魚の泳ぐ水槽も、南国の色彩豊かな魚の泳ぐ水槽も、さまざまな魚の漂う大水槽も見向きもせずひたすら順路を追う。
あっという間に最後の方まで来てしまった。
そこには池のような水槽が置いてあり、手を伸ばせば触れられそうだ。
もちろんその手前には役に立たなさそうな柵と「手を触れないでください」という看板。
中を覗くと小さなウミガメが何匹もいた。
たどたどしい泳ぎがゼンマイ仕掛けのおもちゃのようでおもしろい。
「亀は好きなの?」