あなたが私にできる事
店の中は天国のように暖かい。固まった全身がほぐれていくのを感じる。
相変わらずの騒がしさ。
通された席。
「やっぱファミレスが一番だよね。」
山口くんがソファーに腰掛ける。
そこはさっき和希が座っていた席だ。
「山口くんは何であそこにいたの?」
ホットココアに口を付けながら聞いた。
「ん?あぁ。連れといたんだけどね。バイトあるとかで帰っちゃってさ。その時に変な人発見したからナンパしよ〜って思ったら神崎さんだった。」
「変な人って…。失礼だなぁ。」
「だって真冬の海で座ってんだよ。変じゃね?一人で何してたの?」
山口くんは無邪気にたずねてくる。
悩みのなさそうなその顔が羨ましい。
「う〜ん。さっき彼氏と別れたんだよね。で、一人で青春してた。」
数時間前にはいたはずの和希と山口くんが重なる。
別れを切り出したのは私だ。
それも唐突に。