あなたが私にできる事
振り返ると山口くんが一緒になって水槽を覗いていた。
「何!?」
「さっきからずっと後ろにいたんだけど。神崎さん全然止まらないし。魚も見ないし。俺、鮫見たかったんだけど。」
柵の上に肘を乗せながらふてくされたように言う。
「松本くんと優くんは?」
「イルカ見に行った。」
山口くんは亀の気を引かせようと手を叩く。
きっと自分の家の池でも同じことをしているのだろう。
「山口くんは行かなくていいの?」
「行ったら絶対変なのに絡まれるから。」
そう言いながら私のカバンを引っ張った。
そのまま今歩いてきた方へ連れて行かれる。
「ちょっと、ちょっと!何なの?」
「鮫見に行こう。」
「一人で行きなさいよ。」
「誰もいない水族館とか怖いだろ。なんで客いないんだよ。潰れるぞ?」
一人でブツブツ言いながら歩いていく。
カバンを離してくれる気はなさそうだ。