あなたが私にできる事


ショーが終わったのならイルカが水槽に戻っていることだろう。


イルカのいる別館へと足を向けた。



「神崎さん。待ってよ。」


山口くんが後を追ってくる。



「市川みゆき。」



隣に並ぶとそれだけ言う。

私はチラリと彼を見た。


「で?なんで私が絡まれなきゃならないわけ?」



山口くんは困った顔をして視線を泳がせる。



「あー…、告られたんだよね…。断ったんだけどあきらめないって言われて…。」




最悪だ。


色恋沙汰の絡んだ女ほど面倒くさいものはない。



「まぁ、いいじゃん。俺なんてどうせすぐ飽きられるよ。」



「そーだね。」


その答えに彼はいじけた顔になった。






いつのまにか私の生活の中に山口くんがいることが当たり前となっていた。
知らない人間の出現なんて些細なことだ。



そう思った。



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