あなたが私にできる事
「久坊だって…。」
「やめて。ソレ。」
山口くんは心底嫌そうに顔を歪めた。
「仲良しなんだ?」
「まーね。俺はほとんどねーちゃんに育てられたようなもんだから。」
その顔は悲しそうで切なそうで痛そうで。
無理矢理張り付けたような笑顔が私を苦しくさせる。
「俺の親はずっと兄さんに掛かりっきりだったんだ。だから俺の世話は全部ねーちゃんがしてくれた。4歳しか変わらないのに偉いと思うよ。今だって大学もあるのに毎朝弁当作ってくれるし。」
“って俺シスコン!?”と山口くんは笑いながら言う。
それはさっき見たお姉さんと同じ笑顔。
「なんか。いいね。そういうの。お兄さんは何歳なの?」
「24。今は家業継いでる。ほとんど会ったことないけどね。」
「家業?」
「不動産関係の仕事。まぁ、次男の俺には関係のない話。」
だからこんなに大きな家に住んでいるのかと納得した。
だけどいくら立派な家でもここには“温かい”空気がなかった。
独特の匂いや気恥ずかしさ、そこに住む人以外にはしっくりこないあの感じ。
広さは違えどまるで私の家と同じだ。