あなたが私にできる事
その日はいつもより早く家を出た。
下駄箱で見かける顔ぶれもいつもと違う。
階段を上っている途中で見覚えぼある後ろ姿を見つけた。
私よりも数段上にいる彼に声をかける。
「久坊~。おはよ~。」
見て分かるほどビクッと肩を上げ、山口くんがゆっくり振り返った。
「ソレやめてって。神崎さ~ん。」
「なんで?かわいいじゃん。久坊。」
そんな会話をしながら山口くんに追いついた。
私たちは肩を並べて教室へ向かう。
「今日は来るの早いんだ。何かあるの?」
「別に。たまたまだよ。それよりカメ吉にしようよ。」
何が?という顔で私を見る。
「小さい亀の名前。決まってないんでしょ?大きい方は久坊に決めさせてあげるよ。」
「カメ吉といいごん太といい…。ネーミングセンスないよな。エリザベス?」
「そっちこそね!!」
それは何の気もないいつもの会話だった。