あなたが私にできる事




「あっ、ごめ~ん。」



私の手にあった教科書や筆箱が派手な音を立てて床にちらばる。



理科室に移動しようと廊下を歩いていたら前から来た女子と肩がぶつかった。



まったく気持ちのこもっていない謝罪にムッとした私は無言でしゃがむと落ちた物を拾い始めた。



彼女はそれを手伝おうともせずに私の横を通り過ぎる。



その時聞こえた彼女の捨てゼリフ。



「フッ…。何?久坊って。」



嘲笑うかのような響き。
憎しみを感じる声。






ノートを拾おうとしていた手が止まった。



振り返った時には彼女はもういなかった。




「何してんの?エリザベス。」



代わりに恭ちゃんが立っていた。



「ね、阿部さんって誰?」



上靴に書かれていた名前を思い出す。



「もしかして真理子ちゃんのこと?」




恭ちゃんは気まずそうに、しかし呼びなれたようにその名を口にした。


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