あなたが私にできる事
それから1ヶ月が過ぎた昼休みのことだった。
トイレで手を洗っていた私の顔に水しぶきが飛んできた。
「あれ?かかっちゃった?ごめんね~。」
私の隣には濡れた手を大げさにふる阿部さんがいた。
「やだ。神崎さん。マスカラ滲んでるよ?ダサッ。」
彼女が飛ばした水滴はウォータープルーフでないマスカラをつけていた私の目に直撃していた。
クスクスと笑いながらトイレを出ようとする。
「ちょっと、待ちなさいよ。」
私の我慢も限界に達していた。
彼女の傷んでパサパサの髪を掴んで引っ張った。
「何すんの?」
阿部さんは私の手を振り払うとすごい形相で私を睨む。
「いい加減にしてくれない?毎日毎日うっとおしいんだけど。私が気に入らないなら直接言いなさいよ。」
誰もいないトイレに私の声が響く。
「あんたムカつくんだよ。ヤマとベタベタしやがって。なんであんたが…。」
私の胸ぐらを掴んだ阿部さんの目には今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていた。