神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
鴉天狗が笑い声を響かせる中、鵺は周囲を確認するとこう言った。

「居ないと言うのならば用はありません。
どうせ貴方は口を割りそうに無いですからね…。
ここで死んでいただきましょう!」


その声にいち早く反応したのは鴉天狗だった!
笑い声をピタリと止めると、背中にバサリと黒い翼を生やした!

僧正は釈杖を手に取り身構えた。

「行くぜジジイ!ひゃはぁ!」

鴉天狗は飛び上がると、黒い翼を矢のごとく僧正に降らせた!

「喝ー!!」


僧正は裂帛の気合いで叫ぶと、空中で飛来する翼が燃え上がった!

「相変わらずやっかいな火だな!だがいつまで防げる!?まだまだいくぜ!」

鴉天狗は続けざまに翼を放ってくる!
僧正はとても老年とは思えない体裁きでそれを避けていった!

しかし何カ所か避けきれずに翼が刺さり、出血し始めていた…。


「くっ…!!陽炎!」

僧正がそう叫ぶと、僧正の体が何体も現れた…!!
全員ユラユラと揺らめいてハッキリとしない幻影、まさに陽炎のように。

タタタタタタタタン!

鴉天狗の翼は幻影をすり抜けて床に刺さった。

「クソっ!こざかしいぞジジイ!」

バサッバサッと飛んだまま叫ぶ鴉天狗、その下からニヤニヤした鵺が割り込んだ。
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