神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
部屋に戻った透は、外の景色を見ながら呟いた。


「俺がきっちり倒していれば被害者が出なかったかもしれない…。くそっ!」


拳を強く握りしめて悔しがっていると、扉をノックする音が聞こえた。


コンコン……カチャッ


「入るわよ?」


扉を開けて入ってきたのは忍だった。


「どうした忍?何か用か?」


透が振り返って忍を見ると、一瞬合わせた視線を横に外して忍は言った。


「別に用がなかったら来ちゃダメってワケじゃないでしょ?」


「まぁ構わないが。どうかしたか?」


「ニュース見てから浮かない顔してたから…少し気になっただけよ。
勘違いかもしれないけど、あんたが昨日倒しきれなかったから、被害者が出たなんて考えちゃダメよ?」


忍の言葉は的を得ていて、透は何も言い返せなかった。
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