神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
「………?」
四条の大きな通りを歩いていた女が不意に立ち止まった。
そこはもうじき八坂神社の祇園祭が行われて、大勢の人で溢れ返る場所である。
今も観光客等がいて、誰も女が立ち止まったことになど、気にも止めていなかった。
「妙ね…。街の結界の外に妖の気配…?鵺のモノとは別ね。」
そう呟いて比叡山の方向に顔を向けたのは命だった。
その少し変わった格好も、この場所においては芸者か女将か、その他かと違和感なく溶け込んで見えた。
「あんみつ食べてから、ちょっと覗いてみようかしら?」
命はクスリと笑った後、甘味処に入って行った。