神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
刹那が見つめる結界の中には、命の他に倒れて動かない透の姿があった。

これから行う氷の槍からは、透を守りながら生き残るなど無理だと刹那は考えていた。

前回の戦闘では、中で結界を張られた上に、召喚獣の中でも上位の鬼達に破壊された結界だったが、今は邪魔する者は居ない…。

刹那は自分に任された鵺の命令が遂行できる瞬間に、思わず口の端が上がっていた。


「最後に言い残したい事はある?旦那様へのお土産に持っていってあげるわ。」


結界の中の状況と、叩いても壊れない氷鏡を見た後、刹那に向かって右手を伸ばした。


「最後って何かしら?それは終わりの時に使う言葉よ。」


そう言って命は刹那に右手をクイクイッと倒して挑発した。


「…その身に刻め、氷槍」


ドドドドドドドドドド


命を無視して刹那は鏡の中から数え切れないほどの氷の槍を打ち込んだ!
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