神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
「…お行きなさい沙綺。」


沈黙を裂いて白蓮の凛とした声が響いた。
いつもと違い真面目な顔をして沙綺の前まで来ると、背の高い沙綺を見上げて退魔士の長として言った。


「例え罠だとしても私は大丈夫です。そう簡単にやられるようならば長として名乗れません!
仲間のために力を使いなさい。」


「…御館様……。」


沙綺は白蓮の気迫に押されて言葉に詰まった。
しかし、その確かな決意を感じて頷き返すと、透達と共に修学院離宮に向けて駆け出した。


走り去っていく若い退魔士達の背中を見ながら、白蓮は厳しい表情から心配そうな表情へと変えた。


「…気をつけるんだよ…皆生きて戻っとくれ…。」


白蓮は目を伏せて神に祈った。
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