神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
扉を開けて風呂場に入ると、沙綺は頭にタオルを巻いて湯船に浸かっていた。

透も軽く体を洗い流すと、沙綺に続いて湯船に浸かった。

「ふぃ〜…やっぱ風呂はいいよなぁ〜。」

そう言って沙綺は首をコキコキと鳴らした。よほどこっていたのだろう。

「なぁ神楽、話聞く限りじゃあんたも退魔士なんだろ?
系統は何だ?符術士か結界士か…それとも召喚士か?」

沙綺は肩を揉みほぐしながら透に問いかけた。

透は退魔士に系統があるなんてことは僧正から聞いたことが無かった。

「…知らない。」

透はそう答える以外に思いつかず、ボソリと答えた。

「はぁ〜!?」

透の答えがあまりに的外れだったので、沙綺は思わず驚いた。

「…退魔士に系統があるなんてことは初耳だ。
沙綺が言った符術士にも結界士にも召喚士にも、俺は当てはまらない。」

透は沙綺の目を見つめて再び答えた。

「でも…御館様が認めてる神楽一族なら、間違いなく退魔士なんだろう?
じゃあ、どうやって妖と戦うんだよ?」

沙綺は理解ができないと言った顔で透を見た。

透は湯船から立ち上がりながら言った。

「さぁな…それは一族の者にしか分からないさ…。」

そして透は体を洗うため湯船から出て行った。
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