この空の彼方
「騒がしい。
稽古が始められないじゃないか。」


「まあそう腐るな。
久々の合同練習だ、これくらい賑やかでもいいじゃないか。」



賑やかなどというものではないが、芦多は渋々頷いた。



どうせ二人を止めるのは無理だ。



芦多まで巻き込まれかねない。



飽きるまで放っておくしかなさそうだ。



そろそろ見ている側が疲れ始めた頃、やっと二人は身体を離した。



「やれやれ。
思う存分暴れよって。」



政隆が固まった腰をとんとんと叩いて言った。



「待たせたな。」



琿坐は一向に悪怯れた様子もなく言って、ヒッヒッと笑う。



「もうちょっと休憩が必要だったかな?」



政隆はこれに答えず、鼻で笑った。



「さあ、始めるぞ。
時間が惜しい。」



パンパンと政隆が手を打つと千歳がさっと立ち上がった。



「おし、こい琿坐。」


「大口叩けるのも今のうちだ。」



琿坐は不敵に笑った。



さっきのじゃれあいでよく体力が残っていたものだ。



ガコガコと乱暴に刀を鞘から抜いて、千歳は琿坐に突進していく。



琿坐は歯を剥き出した満面の笑みで迎えた。



それを見た芦多が身震いする。



「私はあんな敵が現れたら間接的に倒す。」


「はっはっはっ。
琿坐が聞いたら泣くぞ。」



最後は咎めるような口調で言われたが、政隆自身が笑っているので説得力がない。



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