この空の彼方
「まあ、わしらも稽古を始めるか。」


「あぁ。」



芦多は手元にあった太刀を引き寄せた。



「とりゃあ!」



いきなり、政隆は槍を振りかざして芦多に向けた。



間一髪、受けとめる。



「危ないぞ政隆!」



第一、槍と太刀では間合いが違う。



「ほれ、さっさと構えろ。」



唸って芦多は立ち上がる。



「稽古で殺さないでくれよ。」


「見くびるな。
わしの腕はサイコーだ。」



ちょっと若者風に肩をそびやかし、政隆はくるくると回転した。



「よし、いいぞ。」



芦多が構えると、政隆はニヤリと笑った。



カキーンと金属音を響かせ、ぶつかりあう。



「くっ。」



なかなか政隆の懐に飛び込めない。



あんな長槍を持て余さずに操るなんて、政隆は…。



芦多は意を決して、姿勢を低くして突っ込んだ。



長槍では逆に間近の敵とは戦いにくいはずだ。



期待通り、政隆は少し驚いたような顔をして、槍を短く持ちかえた。



そして、槍が頭から降ってくる。



予想していた芦多は、素早く右へ回り込み、政隆の背中を狙った。



足払いを仕掛け、政隆のバランスを奪う。



いける!



そう確信した直後、芦多の身体は浮いていた。



わけがわからないまま、地べたに転がる。



起き上がろうと身体を起こすと、もう既に政隆は槍を芦多に突き付けていた。



「…ッ。」



またか。




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