この空の彼方
荒い息を整えながら、芦多は太刀をおろした。



政隆も芦多の頭上から槍を除ける。



「また負けた。」



政隆は無言で芦多を引き起こす。



そして、ガバッと芦多の頭を抱えた。



「!?」



グリグリと頭を撫でられ、芦多は驚きのあまり硬直した。



「芦多、お前、腕を上げたな!」



そこに琿坐も乱入してきた。



「本当にな!
はっはっはっ、幼少時より、お前の才能はピカイチだったからな!」



初めての誉められ方に混乱しながらも、嬉しさを感じた。



「千歳、お前も見習えよ。」



琿坐にそう言われたときの千歳の顔。



芦多は忘れられないだろうと思う。



凄く寂しそうで、哀しそうで。



一瞬でその表情は消えたものの、千歳の声は少しおかしかった。



「あぁ、そうするよ。」



ようやく二人は芦多を放した。



「よし、今度はわしが千歳を見てやろう。」


「おう!」



千歳は刀を下げて、政隆の正面に立った。



「では芦多を借りよう。」



ガリガリと傷だらけの坊主頭を掻き、琿坐は政隆達から離れた。



芦多もあとに続く。



「芦多と交えるのは何年ぶりか。」


「合同練習が終了してからですね。」



型の少年達は、幼い頃は皆一緒に稽古を受け、その後個々の力に応じた師匠につけられるのだ。



芦多は政隆に、千歳は琿坐についた。



「あぁ、腕がなる。」



嬉しそうに強面の顔を緩め、琿坐は言った。




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