この空の彼方
縁側に座った琿坐が荒い息をくり返す。
「芦多、お前…。」
その後が続かない。
もうしばらく息を整えた後、やっと琿坐は口を開いた。
「お前、しばらくの間に強くなったな。」
「それはありがたいお言葉だ。」
「何だよ、その言い方は。」
ククッと芦多は笑った。
「昔、琿坐は私にもう少し前へ出ろと言った。」
「ああ、言ったかもな。」
どうやら覚えていないようで、ポリポリと頭を掻いている。
それがおかしくて、芦多はまた笑った。
「その助言に従っただけさ。」
「ぬぅ。」
そんなこと言ったっけか?と考えている顔がまたおもしろい。
強面なのになぜか少年の面影があるのだ。
そこへ、政隆と千歳がやってきた。
「おう、終わったか。」
そういう政隆はまたも涼しい顔だ。
「千歳、どうだった?」
芦多が尋ねると、千歳はぶすっとした顔で答えた。
「見ればわかんだろ。
このおっさん、無駄に動きが速い。」
「だろう。」
「まったく、少しも勝算がないとはなぁ。」
弱ったように呟いて、千歳は芦多の隣に座った。