この空の彼方



縁側に座った琿坐が荒い息をくり返す。



「芦多、お前…。」



その後が続かない。



もうしばらく息を整えた後、やっと琿坐は口を開いた。



「お前、しばらくの間に強くなったな。」


「それはありがたいお言葉だ。」


「何だよ、その言い方は。」



ククッと芦多は笑った。



「昔、琿坐は私にもう少し前へ出ろと言った。」


「ああ、言ったかもな。」



どうやら覚えていないようで、ポリポリと頭を掻いている。



それがおかしくて、芦多はまた笑った。



「その助言に従っただけさ。」


「ぬぅ。」



そんなこと言ったっけか?と考えている顔がまたおもしろい。



強面なのになぜか少年の面影があるのだ。



そこへ、政隆と千歳がやってきた。



「おう、終わったか。」



そういう政隆はまたも涼しい顔だ。



「千歳、どうだった?」



芦多が尋ねると、千歳はぶすっとした顔で答えた。



「見ればわかんだろ。
このおっさん、無駄に動きが速い。」


「だろう。」


「まったく、少しも勝算がないとはなぁ。」



弱ったように呟いて、千歳は芦多の隣に座った。




< 128 / 460 >

この作品をシェア

pagetop