この空の彼方
「政隆が弱るのを待つしかないと言っただろう?」


「冗談だと思ってたのに、ホントだったんだな。」



ふー、と長い息を吐き出し、千歳は縁側に倒れた。



気持ちよさそうに伸びをする姿はまるで猫だ。



芦多も真似て寝転がった。



「お前たち、精進しろよ。」



もう何回も何回も聞いたセリフが降ってくる。



「わかってんよ。
俺達はだいぶ腕上げたと思うぜ、自分で言うのもあれだけどよ。」



がばっと起き上がって千歳が抗議する。



「私達が勝てないのは政隆があんまりにも強いからだ。」



千歳が芦多の言葉に乗っかる。



「証拠に、こないだの武術大会で芦多が優勝してみせただろ?」


「自分のことのように威張るな馬鹿めが。」



コツンと頭を小突かれ、千歳はよろけた。



「罰則を食らって2年連続出場停止とは情けない。
この琿坐、どれだけ胸を痛めたか…。」



泣き真似などしてみても、似合わない。



政隆は呆れて目をそらした。



「見ておれん。」



目が合った芦多にそう言って、政隆は立ち上がる。



芦多も続いた。



「片付けろ、芦多。」


「ああ。」



でこぼこになった土を均し、武器の手入れをする。



その間も、千歳と琿坐はじゃれあっていた。














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