この空の彼方
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最近、灯世は部屋の外に出る機会がめっきり減った。
侍女の手伝いをさせられているほうがマシだった。
最近は屋敷の娘達に交じって、勉学を強制されているのだ。
文字はもともと読めたから良かったものの、生け花やら茶道やら歌やら。
灯世には関係のなかった習い事が目白押しで、頭はいっぱいだ。
部屋に帰ってからは何もする気が起きず、ぼんやりと過ごしている。
それより何より嫌なのが、娘達との昼食の時間だった。
「灯世さんは、いい御身分ですわねぇ。」
「毎朝祈祷だけしていれば、辰之助様に可愛がって頂けるんですもの。」
「この間のように、少し手柄を立てれば、もう姫様と同じように暮らせて。」
「羨ましいですわ。」
次々と口を開けば、このような文句ばかり。
彼女達の目が、灯世を射る瞬間が何よりも怖い。
千歳は「やっかみだ。放っておけ。」なんて言うが、もともと神経の細い灯世には耐え難い。
彼女達も何とか辰之助に見初められようと必死なのはわかる。
親や親類からの圧力があるのも、わかる。
だが、それを灯世に当たられるのは御免だ。
中でも、どうやら本気で辰之助に想いを寄せているらしい里はなかなか対応がえげつない。
灯世の本をわざと落としていったり、あることないこと陰口を叩く。
もともとこの屋敷で良く思われていない灯世に対する風当たりはますます強くなった。