この空の彼方
「失礼します。」



外から声がかかり、灯世はびくりと飛び上がった。



「は、はい。」


「八重様が先ほどお着きになりました。」


「ありがとうございます!」



灯世は驚く侍女の前を風のように走り去った。



母様が帰ってきた!



ざわざわとしている正面玄関に走る。



予想は当たり、八重一行が丁度到着したところだった。



既に、八重は馬を下りていて、召使いの男の案内を受けていた。



「母様。」



灯世に気付いた八重は少し笑って、屋敷の中に入って行った。



「ようやく、八重様もご帰還かぁ。」


「治安も良くなってきたのかな。」



貴族の男たちがそう話しているのを聞いて、灯世は少し安心した。



これからしばらくは一緒に暮らせる。



と、ポンと灯世の肩に手が乗った。



見上げると、芦多だ。



目が、良かったなと言っている。



灯世は何度も頷いた。



ポスっと芦多に抱きつきさえした。



芦多は驚いたようだったが、灯世の興奮を黙って受け止めてくれた。




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