この空の彼方



***



八重が戻って数日。



何故か、芦多は辰太郎に呼び出された。



政隆が今朝早く芦多に部屋を訪れ、緊迫した面持ちで言った。



「芦多、辰太郎様がお呼びだ。」



政隆の様子からすると、なにやら自分はとんでもない状況にいるらしい。



だが、芦多には何も身に覚えがない。



いったい、なんだろう。



正装をし、芦多はいつもよりも礼儀正しく謁見の間に向かった。



先を行く案内役の男はずっと無言だ。



なんだか気味が悪い。



間に着くと、何人かがもう座っていた。



いつもとは、違う。



重役までもが勢ぞろいだ。



「失礼致します。」


「面を上げろ。」



言われたとおり、芦多は身体を伸ばした。



辰之助親子の目が、鋭く芦多を射ていた。



「今日は、お前に提案があって呼んだ。」



いきなり辰之助は本題を切り出す。



「今、我が国が危機的状況に陥っているのは知っているな?」


「はい。」



嫌な予感がする。




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